―現在となっては遠い…
 …親友と過ごした彼の日々…


 邂逅 ―第1章―追憶T―


 「オーディン、ヘーニル私はこれから少し旅に出ようと思う」
 金髪碧眼の美しい青年は、アスクとエムブラと名付けられた人間達が去って行くその背が遠くなるのを見据えながら、そうなんでもないように言った。
 「旅か…世界の創造は一段落ついたからな、このあたりでゆっくり休むと言うのも良いかもしれん」
 オーディンは世界を見渡し感慨深げにそう呟いて青年の言葉に頷いた。
 「…オーディン…それは…少し気が早いと思うよ…それにローズルはそういうつもりではないと…思う…」
 嬉しげなオーディンの様子にヘーニルは不安げな様子でそう言った。
 「どう言うことだ?ヘーニル?ローズル?」
 ヘーニルの言葉に、オーディンはヘーニルとローズルの二柱の顔を交互に見比べ問いかける…
 「…恐らく…ローズルは一柱で行くつもりだと…思う…」
 迷いながらもヘーニルはそうオーディンに告げる。
 ヘーニルの言葉にローズルは頷き…
 「その通りだヘーニル。オーディン私は一柱で行く」
 …そしてそう答えた。
 「何故だ?ローズル何故そんな事を言う!」
 予想外の言葉にオーディンは驚いた、イダヴェルの野原で初めて出会った時からこれまで、ずっと共にいて、助けてくれた、何処に行くにも何をするのも一緒だと思っていた友の言葉とは思えなかったからだった…
 「此処での私の役目は終わった、そして私には他にもする事がある…」
 驚くオーディンに比してローズルは淡々とした様子でそう言った。 
 「他にする事?それなら尚更私も共に行くぞ!お前はこれまで私を助けてくれた、今度は私がお前を助けよう!一柱より三柱の方が早くすむ、早く終わらせて帰ってきて、そしてこれからもこの国を!私を助けてくれ!」
 オーディンには最早三柱が共に居ないなどという状況は考えられるものではなかった、この時のオーディンは三柱は常に共に居て、共に行動し、協力しあうものだと考え、当然他の二柱も同じ考えでいると思っていたし、別れる事など考え及びもしなかったのだ…
 「何を言うオーディンよ、お前にはヘーニルが、そしてヴィリとヴェーという弟たちがいるだろう、助け手なら彼等だけでも充分だろう」
 呆れた様にそう言いローズルは微かに笑みを浮かべた。
 「…ローズル…私ではお前の代わりには…ならないと…思う…のだけど?」
 ヘーニルは止める事は出来ないかと思う…しかし無駄だとも思い…止めて良いものかとも思い迷う…
 「何を言う足長の君よ、お前は私の代わりなどする必要はないだろう、お前にはお前の役割があるのだから…それに私の代わりなど何処にもいない、お前達の代わりが何処にもいない様にな」
 オーディンの複雑な性格とヘーニルの狭量で決断力が無いという性癖を知悉しているローズルは、柔らかな笑みを浮かべ、二柱の不安を拭い、不快にさせないようにそう言って、そして二柱に別れを告げて去って行った…

                             ―続く― 
 ―あとがき―
 皆様お久し振りです、そしてお待たせしました、ようやく第1章の始まりですm(_ _)m
 さてなんだか前回以上に魔探偵ロキ物から単なる北欧神話物になってます…
 一応魔ロキベースなんですけど…
 うう…でも…現在コミックブレイドでどんどん明かされつつあるロキの秘密…
 …多分この話の設定として捏造としているロキの秘密とは全然違うと思います…
 …ローズルもヘーニルも…出てこないだろうし…多分…うぅ…
 …まあ…元々パロディなんだから其程気にしなくても良いかとも思いますが…
 …前回序章を書いてその後…暫くして発売されたコミックブレイド本誌の内容が進む内に思ったのは…
 「うわっ!まずいなあロキの過去がどんどん出てくるよ(個人的には嬉しいけどv)…予想はしてたけど…このままだとこの話…その内全然違う内容を延々続ける事になる!あー魔ロキ物にせずに普通の北欧神話パロにしておいた方が良かったかなあ?」
 …と言う感じのものでした…(-_-;)
 …多分この話…これから魔ロキを感じさせる所が出てくると思いますが…北欧神話物だと思って下さい…
 ―それではまたの機会に―RIN―